「 被害 」とは、 人の都合でつくられた言葉だと 思い至った夜

わたしは

背すじを
凍らせながら

苦手な

虫を

ヤーッ!!

サッシの外へ
放りなげた

暗闇の
トタン屋根で

虫が

ワンバウンドする音が
聞こえた

脈拍が

1.5倍に
上がっている

目の前にさえ
現れなければ

こんなことは
しないのに …

罪の意識を
感じつつ

バタンッ!!

サッシを
閉める

瞬間

おや!?

はるか頭上に
光るもの …

あ!!

お月さま …

随分
久しぶりだった

カレンダーを
見る

今夜は
十七夜

時計は
深夜0時を
指そうとしている

思いがけない
こんな再会が

お月さまの
醍醐味でもある

一息ついて
呼びかける

「 久しぶりじゃないですか〜 」

『 オホホホ 、そやな〜 』

「 もう豪雨で大変でしたよ〜 」

『 そやったな〜 』

. . . .

お互いに
黙る

. . . .

そしてまた
黙る

. . . .

その先を
語っても

キリが
ないことを

お月さまは

静かに
教える

気づくと

脈拍が
戻っている

『 それにしても こんな時間に
ウチを よう見つけたな〜 』

「 虫の知らせですよ 」

『 あんたな〜
それは、不吉な時に使う言葉やで 』

「 害虫でした! 」

わたしは
会釈し

静かにカーテンを
閉めた

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