さあ今こそ、涙のための 10リットルのバケツを用意して ゲルギエフの 「 ボレロ 」を聴こう!

小太鼓が

乾燥したリズムを
刻み始める

わたしは
ニヤリとする

ぬめった
フルートが絡む

フルート君
一人で行けるかい !?

肺活量は、

ブレスは
大丈夫か !?

一世一代のヘマなど
容赦しないぞ !

両拳を握り

わたしは
番人を決めこむ

クラリネット、

ファゴットが続く

….

とは言え、

ふふふ ..

ゲルギエフよ、

よくぞ

その顔を
手に入れたものだ !

誰もが

そうした顔に
なりたいものだ

慈愛深く

少し気弱を
漂わせながらも

しっかりと一線を
超えてきた顔

なにせ
キミは

指揮棒を
振る前に

本物の意味の沈黙を
会場に与え

まばたき
のみで

小太鼓を
スタートさせた

そこで

キミの勝利は
確信された

オーケストラはもう
キミのモノだった

人は

プロフィールなど
必要としない顔を

求め

理解するものだ

クレシェンドが

重い荷物に耐える
牛馬のように

坂道を
登る

開けていない
楽器すら

緊張という余白を
奏でていた

あちこちを移ろう
カメラワーク

この曲が

映像の
精緻により

さらに際立つことを
立証したプロデューサーにも

万感の拍手を
送る

誰もが振り子を
揺らしていた

最上のクライマックスへ!

そして

賽は

投げられた !

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