風の音が聞こえるよね . . . そんな、クリスタルで かつ トラッドな時代に帆を張ろう

その
造形美は

生暖かい
潮騒の中を

右目から

私の画角に
進入し

予想を上回る
スピードで

鼻梁に
接近するや

急遽
タッキングを施し

一気に

左目の画角へと
加速した

甲板上の
日焼けした男たちが

あたかも
命がけのように

グラインダーを
回し

帆のセッティングに
動き回っていた

非動力が

これほどまでに
美しく海をすべるサマに

私は
陶酔し

一瞬
神を見た

その
大型ヨットは

コンマを競う
競技艇だ

無造作に
風の一部分を抜きとり

その容積に

白い牛乳を
注ぎ込んで固めたような

限りなく
透明な美しさは

およそ
人間が考えつく

デコラティブな
美とは

完全に
真逆な

究極の
自然美であり

「 シンプル 」という言葉への責任を
先鋭化させた

その流体は

無数の
3次ベジェ曲線の束であり

その
1本 1本が

あらゆる風や波の慣性から
導き出された

神の線だ

車のボディも

ベジェ曲線の
塊でありながら

最終的には

駆動力と
タイヤ強度で走る

しかし
ヨットは

いかに
流麗であれ

風がなければ
止まる

いかにして
風を受けるか

それが

甲板クルーが
心を一つにして向かう仕事だ

なぜこんなことを
書いたのか

「 令和 」という新元号への
感想である

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