初動は
うまくいった
地上から
吹き上がる
ぬらりとした
春の夜風は
想像以上に
強く
わたしの
身体を
さらに
100m
上空へと
舞い上げた
わたしは
モンローのスカートを
想い出した
. . .
朱い
燃えるような水平線が
まるで
ジャイロのように
小刻みに
左右へ律動し
わたしは
かろうじて
身体の平衡を
たもつ
地面を
覆い尽くす
規則
正しくも
夥しい
光の粒は
様々に
発色し
膨張し
角がとれて
融合し
眼の中で
溶けた
. . .
そもそも
なぜ
わたしは
地上50階の
ベランダを
離床
したのだろう
. . .
理由は
ない
ただただ
姉の声が
聞こえたのだ
. . .
姉が
普通どおり
生まれていれば
わたしは
生まれていない
強いて
あげるとすれば
それが
理由だ
. . .
姉が
すぐ傍に居るのが
わかった
わたしは
「 いつもゴメン
困った時ばかりのお願いで … 」
と
詫びた
返事は
なかったが
心地よい
暖かさが
わたしを
包んだ
そう
わたしと姉は
一緒に生きている
. . .
そう思った瞬間
これは夢だと
覚醒した
なぜなら
いつも
そう思っているから
. . .
背中の下に
存在の
危うい
布団の感触が
あった
わたしは
そっと
目を
開けた