「 哲学もどき 」をくゆらすのは 、 今やこの世で  もっとも贅沢な時間なのだそうだ 。

ささやか
でも

書斎と
呼べるもの
があり

そこに
窓があれば

それは

人生の
贈り物だ

窓の先が

隣家の
カベであれば

残念ながら
それは

通気孔と
呼ぶ

西日には
手を焼くものだ

窓は
できれば

東向きが
いい

太陽も月も
東から上る

わたしは
田舎暮らしのため

幸運にも

その恩恵に
恵まれた

しかも
一面

蒼々とした
裏山に
面している

今年は
少し

不思議なことが
起きた

昨年の
晩秋から

木々に
沢山の
実をつけていた

黄色い大きな
ハッサク

その
殆どは

春先に
落下したが

なんと
最後の一つが

夏の猛暑と大雨を
くぐりぬけ

まだ樹間に
ぶら下がっている

そう

オー・ヘンリーの
気分なのだ

おかげで

最近
わたしの朝は

神棚へ
会釈の後

ハッサクにも
会釈する

もちろん

その
ハッサクが

絵や
切り紙細工
でないことは

すでに
確かめている

きっと
彼にも

なにか
使命があるに
ちがいない

わたしは
それを

ずっと
考えていたが

やっと
先日

彼が

重い口を
開いて

「 一人
  哲学もどきを
  遊ぶなんざ

  この世で一番
 贅沢なことですよ 」


呟き

「 だいいち
  ボクに気がつくようじゃ

  あなたも
  よっぽど暇で
  おめでたい人ですね 」


笑った

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