ふと気づくと
胸元まで
水がある
真っ暗な川面を
微かな渦が
通り過ぎる
さっき
最終電車を
降りたはずなのに . . .
なぜオレは
ここに?
しかも
スーツ姿で . . .
雪山で
生き残るより
静かに眠りたくなる気持ちが
少しわかった
そうだ
ありふれた
普通の道を帰るより
飛び石の川を
飛びたくなったのだ
そして
川に落ちた
それだけの
ことだった
しかし
悪かったのは
その川が
存外に
深かったこと
我が家の近くなのに
人間は
知らないことだらけだな〜
反省した
次の一瞬
足元が滑り
頭まで没した
危機は
何気無い日常に
潜んでいる
わたしは
濡れ鼠で
必死に
岸へ辿り着いた
クロールのように
たぶん
双かきは
したはずだ
もう
25年くらい
前のこと
それ以来
深酒をした時は
冒険をしない
と
決めている
広い道を
歩く
しかし
広い道でも
道幅一杯に
蛇行する
どっちみち
危ないのだ
そこで
蛇行するほどの深酒は
それ以来していない
根本的に
飛び石を蛇行したのが
悪かったと
因果関係は
掴んでいる
連休に
儀礼的に帰省した息子の
酒の帰りを心配する
周囲は
もういい大人なんだから
と言う
だが
わたしの心配のレベルは
より深いのだ