300メートル通り過ぎても 舞い戻って 一見さんで暖簾をくぐる醍醐味。

宵の

酒の話だ。

いい感じの
店頭を
通り過ぎると

そこに
責任が
発生する。

「 おい、入らなくていいのかい ? 」

この責任が
なにかと
厄介なのだ。

入らない言い訳を
あれこれ
並べた辺りで
100メートル過ぎている。

一度振り返る。

また歩き出す。

「 いつもお前は判断が遅いよな〜 」

己への自虐を
あれこれ
並べた辺りで
200メートル過ぎている。

また振り返り
少し
立ち尽くす。

また歩き出す。

頭の中は

自分が
優柔不断なのか

それとも
店の本質が
優柔不断なのか

激しく判断を
求めている。

300メートル過ぎた辺りで

「 おい、これ以上歩くと圏外だぞ ! 」

足が止まる。

やれやれ
またこの責任感かよ〜
っと

我ながら
苦笑する。

要は
自分の嗅覚への
テストなのだ。

足早に
300メートル戻り

階段を3階へ
翔け上がる。

わたしの目は

雑居ビル3階の小料理屋が
路上に出した
メニュー看板の
空気感に
反応してたのだ。

宇宙人を見るような目で

仕込みが
終わったばかり風の女将が
わたしを見る。

「 引き寄せられちゃって . . 」

笑って
カウンターに座る。

これこそが

独り呑みの
醍醐味でもある。

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