防長路 梅の蕾に 春ちかし  暖気の兆し さざ波に舞う

例年に
増し

寒い日々が
続く

ふと
思い立ち

山陽道を
西へ …

防長路の

防府 を
目指した

その昔

京から
太宰府へ

左遷の身と
なった

道真の
怨嗟が

今は

防府天満宮の
梅に化身し

人々を
愉しませる

もちろん
1月末のこと

蕾は

小さく
硬い

しかも

空気は

冷たく
鎮まりかえっている

だからこそ

この時期に
しかない

春への
期待感が

心を
暖める

. . .

東は周南
西は宇部

その

両突端に
護られて

防府は
穏やかな

総構えの町に
見える

何に
対してか?

もちろん

月 だ!

京の
船岡山に似て

背後の山々から
張り出した

なだらかで
小高い
天神山が

穏やかな
瀬戸の海を
抱えこみ

天上の
月へ

扇の
要のように

ゆらり
ゆらりと

海霧を
くゆらせる

わたしは
脈絡もなく

あの
童謡

「月の砂漠」 を
想い出した

砂漠を
抜けたあと

もしかして

王子は
山を

姫は
海路をとって

月の昇る
東をめざし

この
日本に

辿りついたのでは
なかろうか

落ち合う
場所は

この
防府であっても

おかしく
ない

そんな
放浪の気配すら

この町には
あり

山頭火の
出現も

どこか
必然だったのでは


思わせる

帰途の
植木屋で

懸案だった沈丁花を
手に入れ

わたしも

春への
総構えが

整った

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