街をたゆたいながら 新月にこそ想う 月の奥ぶかき霊力

昨夜
18日は

今年最後の
新月だった

若き乙女なら

願い事を
託す日だ(笑)

鉛色の川面を
見下ろしながら

ゆっくりと
駅前大橋を渡る

寒波が
スルリと

襟元から
しのびこみ

信号待ちで

思わず
身震いする

月が
出ていても
出ていなくても

その
存在こそ

叙情を
掻き立て

まさに

京都に居る
気持ちに

させてくれる

わたしは

忘年会への道を
急いだ

忘年会と
いっても

ささやかな
二人会だ

宵闇の中から
ふと

まるで
満月のような輝きで

白い
スーツ姿の彼が
現れた

今日は
貴方の息子と
一杯やりますよ . . .


わたしが言うと

お〜! そ〜か
よろしくたのむ


彼は笑い

得心した
背中で

ゆっくりと
宵闇に消えた

剛毅と繊細が
同居した人だった

3度絶交し
同じだけ
仲直りした先輩だ

彼の
立ち居振る舞いは

街のデザインに
貢献した

わたしは
彼の姿から

引力と
空白の力
タイミングについて
勉強した

そして
デザインというものが

いかに

憤怒の努力と
思い遣りを

礎にすべきかも
学んだ

ガラガラッ

格子戸を
開ける

息子は
もう

整然と
カウンターに座り
待っていた

何にされますか?
彼の誘いに

じゃ
ビールから始めようか

応え

わたしは
静かに座った

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