それでも素敵な京都の夏、 四条大橋の夏

さんざん「暑い」と
書き立てたのは、

それでも
京都の夏が
素敵だからだ。

まずは
河原町の側から
四条大橋に出てみよう。

そこは、
これ見よがしと
視界が一気に開ける。

狭い袖から
いきなり
広い舞台へ飛び出し、
一瞬にして
全ての照明を浴びたような
目眩にも似た
浮遊感に見舞われる。

天地水明の全てが
喉元から
五臓六腑に
飛び込んでくる感じだ。

両岸に
緑地帯を備えた
広々とした川幅。

川底を映して
縮緬のように輝く
清明な水面。

ふら〜っと風が動き
空気の密度が
ふっふっふっ…と軽くなり
空がぐわっ…と近づいてくる。

まっすぐ北に伸びる鴨川は、
下鴨糺ノ森(ただすのもり)に
突き刺ささると
中景の緑を演出する。

右に比叡山
遠い先には
北山の峰々が
まるで屏風絵のように
借景を広げ
絶妙な視界止めとなる。

私は
これほど遠近感のある舞台を
他に知らない。

橋とは
縁を渡すものであるが、
この橋に限っては、
天地、山紫、風水、
そして時空、
人と魂、
それら全ての縁を
一点に結んで
あまりある。

川を挟んで両岸に
三条の鴨川をどりと
四条の南座が対峙するのも
正に
この大橋の霊威に
あやかりたや…
と見ゆる。

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