随分昔の話だが、
海外出張の帰途
苦い経験がある。
ニュージーランド
オークランド空港、
私が乗るべき日本便は
もう何度となく
最終搭乗案内を繰り返していた。
あの無機質で容赦ない場内放送だ。
しかし
まだ搭乗手続きすら終えてない私は
広いコンコースの一角で
スーツケースの中身をひっくり返し
パスポート探しに熱中していた。
同行の連中は
もう俺たちは先に乗るぞ..
と半ば目が吊り上っており、
見送りに来た現地野郎は、
もうこいつは置いて帰れ
見込みがない..
みたいなことを言って
笑っている。
流石に焦った。
もういい、
俺は自腹で別便で帰る!
と言いそうになったその時、
バッサバサになった衣類の中から
ぽろりっ..と
パスポートが転がり出た。
我々一行は、
冷や汗もので一連の手続きを終え
あたかもトムとジェリーのごとく
土煙をあげながら
飛行機に乗り込んだのは
言うまでもない。
あれから飛行機を苦手としている。
空港に行くと
たとえ国内線であろうと
緊張する。
しかも、
国際線の場合、
その手続きの多いこと。
なんとか乗り込むや
よくぞここまで辿り着いた..と
いつも胸を撫で下ろしている。