月からの道、月からの使者

京都を想うとき
いつもイメージする情景がある。
ちょっと叙情的に書くとすれば
以下のようになる。

『 漆黒の闇に、
一点神々しく浮かび上がる
月の姿。
気が遠くなるほどの太古より
月はそこにあった。
太陽の力をいただき
決して不遜の体をとらず
静かに
ただひたすら
清廉と輝きつづけてきた。
平安京の誕生には
月もさぞ喜んだであろう。
安心して己の姿を映しこめる
安住の地として…
そして、
私たち祖先も
あらゆる政(まつりごと)に
月の霊力をいただき
人心を整え
また、
その御姿を池に浮かべ
風流を愉しんだ。
さあ今宵も、
歴史に名を残せなかった
数多の秘する想いに心通わせ
我が瞳の池に
白き月を浮かべるとしよう。』

自分で読み返してみても
少々鼻につが、
ロマンチックの一瞬には
こんな感情も
こみ上げるものだ。

続きがある。

『エレベーターのように
「月からの道」が地上に届き
そこに、
「月からの使者」
白きうさぎが
音もなく降りてくる。
絹のドレスを羽織ったうさぎは、
風にゆれる両袖を広げ
オーラのように
巨椋池辺りに降り立ち
ゆっくりとした足取りで
朱雀門の方向へと
消えていった。』

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