意識しないところで  自然界と共に生きている  わたしたち 。

最近

愉しみに
待っていたことがある。

沈丁花は
いつ薫るのか . . .

もう薫っても
いい頃だが

一向に薫らない。

背を丸め
庭先を掃く
同居の
じいさんに聞くと

沈丁花は
去年
枯れたと言う。

去年の夏
大切な母が
しずかに逝ったが

それを
追うかのように
枯れたらしい。

そうか〜
枯れたか〜

しばし沈黙

以前も
このブログで触れたが

寒さから
暖かさへの変わり目に
沈丁花

逆に

残暑から
肌寒さへの変わり目に
金木犀

いずれも
我が家の玄関先で
風のように咲き

その都度
わたしは

幼少時
オルガン教室で

黒鍵だけを
弾いた時のような

甘酸っぱく
少し
物悲しい
他生の縁に
触れたものだ。

メリーゴーランドのように
慌ただしい生活を
していても

この
二つの麗しい芳香は

自然からわたしへの
強制的
目覚まし時計
だった。

その大切な
一つを失って

最近ちょっと
居住まいが悪い。

頭では
分かっていても

沈丁花が薫らないと
反応しない身体に
気づいている。

わたしは
ふと思い立ち

探し回ったスコップで
玄関先に穴を掘り

裏山の腐葉土で
床を作った。

さあ

近いうちに
沈丁花の苗木を
買いに行こう。

少し目の前が

開けた気分で居る。

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