山肌によりそう生活の平安と不満

私の自宅は
海抜120m辺り
500m級の山々が林立した
山肌にある。
ヤマタノオロチがうねったような
すり鉢状の底に
JR、国道、一級河川が蛇行し
ささやかな商業施設が点在する。
家に向かう坂道は急で細く
めったなことがない限り
誰も訪ねてこない。
見渡す山々
流れる雲
周囲には畑や虫の音
柿やミカンも生る。
少し裏山に上がれば
海も見える。
行く気になれば
中心街も
車で30分余り
一見非の打ち所がない。
しかし、
一転別の願望もある。
ちょっとサンダルで
近くの居酒屋へ、
ちょっとチャリ(自転車)で
近くの豆腐屋へ、
ちょっと手桶片手に
近くの銭湯へ、
…などなど、
書き始めたらきりがないのだが、
この「ちょっと..」ができない。
外へ出て行くということが
いちいち身構える作業となる。
これは私にとって相当痛い。
人生にとって
相当の損失だと
考えている。
なぜなら、
この「ちょっと」が
いろんな風や記憶を
呼び覚まし、
人生に
フットワークと彩りを
与えてくれるからだ。
う〜ん、どうしたものか。
裏庭の大根をすり下ろしながら
考える日々は続く。

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