もう
搭乗手続きが
始まっている
わたしは
40年前住んだ
ワンルームへ
パスポートをとりに
引返した
その部屋は
平屋だったはずだが
5階だ
という
しかも
パスポートが
なぜ
40年前の
部屋に?!
わたしは
叫びながら
東EVで
12階まで上り
西EVで
3階まで下り
野戦病院の
ごとき
阿鼻叫喚を
掻き分け
夜叉のごとく
5階へ
階段を
駆けあがった
想い出の
扉
学生を終え
総ての家財は
引き払ったはずなのに
部屋は
当時のまま
家財道具一式
揃っている
どうして!?
. . . . .
ふと
我に返り
引出しを
引っくり返す
パスポート!
パスポート!
隣の男が
顔をのぞかせ
「 やっと帰ったんですね 」
と笑う
シマッタ!
ハメラレタ!
. . . . .
わたしは
全てを察知した
大家が
紅い舌をたぎらせ
顔を覗かせるのも
時間の問題だ
40年間の
不毛な家賃を
シミュレートし
わたしは
唖然とした
しかも
考えてみれば
40年前の
パスポートが
いったい
なんの役に
立つんだ!
わたしは
へたり込んだ
何故
いつも
オレは
こうなんだ!!
. . . . .
ゴーーーーッ
想い出の
窓を
白銀を
光らせながら
ボーイングが
飛び去ってゆく