もしもし そこは待合室では ありませんよ。

場所には

聖域
というものが
ある

年末などは

特に
そうだが

百貨店の
エントランスで

風除室から
ロビー周辺

カエルの
卵のように
はりついて

キョロキョロ

待ち人さがしを
するのは

美しくない!

しかも

哀愁や
加齢臭を
漂わせるのは

もっての
他である!

話は

半世紀も
遡るが

敏感な
わたしなど

風除室を
抜けた瞬間

もう

8階
展望食堂の

甘い蜜と

四角く蕩ける
バターの香りまで

明確に
嗅ぎわけ

二段の
ホットケーキが

シュプールを
描きながら

テーブルへ
やってくるのを

連想したものだ

そう!

ここは
聖域なのだ

では

どうやって
待ち合わせを
するべきか

それは

買い物客を
装いながら

のんびりと

待つことである

「 あら、こちらにいらっしゃったの? 」

「 あ〜、ちょっと陶磁器を見たくなってね 」

「 ま〜、お目が高くていらっしゃるわ 」

「 それほどでもないよ、 さあ、食事にでも行こう 」

まあざっと
こんな感じだ

わたしは
ハンフリー・ボガードになり

秀麗な
イングリッド・バーグマンを
つれそう

古いか!

ただ

フロアーを
決めておかないと

折角の
ディナーどころか

喧嘩別れの
可能性もあることを

付け加えておく

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