土曜の朝
9時過ぎの街
凪いでいる
気温17度
雨ともいえぬ
霧吹きのような湿気
ウィークデイの緊張はない
薄墨を流したように
コーヒーブレイクな空気
小さなベーカリーが
ゴロゴロと
看板を出す
どこか
桜の匂い. . .
いや
パンの匂い?
いやいや
華やいだ
昨夜の
余燼か . . .
車や信号の音も
メロディーになる
30年ぶり
口ずさむ
バート・バカラック
雨に濡れても . . .
幸せとは
こういうことだ
人類は
今朝の幸せを求め
歴史を
積み重ねてきた
わたしは今
その頂点に居る
世界中の朝が
こうあって欲しい
受付名簿に
向かう
真っさらな手板の
一番上に
名前を書く
人生で初めてじゃないか?
勝者のメンタリティー
どうぞ〜 . .
勝手知ったる
診察台の汚れ
痛かったら
言いなさいね
フィーン! フィーン! フィーン!
削れた奥歯
カルシウムの匂い
「せんせ〜、せっかくいい気分で来たのに〜」
「ハハハ、君はいいなあ
僕はここに縛られて 何処へ行くこともなく
一生このまま終わるんだよ〜」
380円です
街を抜けて
川に出る
両護岸に
桜
川岸を波が
軽くたたく
ふと
水中眼鏡の
水の匂い
初夏も近い