盆蝉が
ジージー鳴く。
集まってギャーギャー鳴く。
彼らも忙しい。
一人だけ静かにしていたら
村八分に遭う。
蝉に生まれた以上
鳴きたくなくても
鳴かなければならない。
今朝は早くから
鎮守の杜
町内会盆踊りの設営に
駆り出された。
首にタオル、
帽子にサングラス…。
総勢50名。
みんなよく動く。
わたしも
何かやろうと
道具を手にとろうとするや
ササッと
先を越される。
7〜8回
そんなことを繰り返し
あきらめた。
ベンチに座った。
49名が黙々と
寸暇の静止も拒むように
動き続ける。
わたしだけ
地蔵の様に
座り続ける。
鎮守の杜を覆う
蝉の大合唱。
彼らとて
片時も
休んでいない。
休んでいるのは
わたしだけ。
う〜ん、
これはやや
厳しい状況だ。
ちょっと何かする素振りでも
見せようか…
と思うが、
いやいや、
もう最後まで座っとけ…
と心の声。
あたりは
作業の奪い合いのように
一段と喧しくなる。
どうして
こんなに忙しいのか
…と不思議な気分。
そうこうしてると、
婦人部なる人が
冷えたお茶を
配り始める。
何故か一番に
わたしがもらう。
背中に一本、
スーっと
冷や汗が流れる。