この道は
久しぶりだ
思った矢先
「 たまには 寄ってくださいよ〜 」
彼の声が
した
怒った声では
ない
わたしは
吸いこまれるように
左折すると
一本裏手の
クスノキの木陰に
車を停めた
いや〜
バタバタしててさ〜
言うと
「 あはははは
いいんですよ
お元気そうで 」
彼が
微笑む
もう
三年かな〜
「 どうでしょ
確かめてみてもらえますか? 」
わたしは
裏面に回った
ん ?
平成二十四年 九月 . . .
ええ〜
もう六年近く〜!
彼は
相変わらずですね〜
という顔で
目を糸にして
笑いながら
「 早いですよね〜
ボクもね
結構忙しくしてるんですよ〜 」
と言う
わたしは
疎遠を恐縮しながら
忙しいの?
と返す
「 こっちの世界も
同じことです
困った人が
あちこちいるんでよ 」
彼はずっと
笑っている
「 だからボクも
今朝ここに
帰ってきたばっかりで
そこへ
丁度あなたが
通りかかるもんだから
つい声を
かけちゃって 」
二人
笑った
また来るね
言うと
「 ぼくも
出てたらごめんなさい 」
と彼
わたしは
片手を挙げた
オレンジ色に
染まる
夕刻の街を
走りぬけながら
ビルエバンスの
ピアノが
ひときわ
沁みわたった