覆水ならぬ、 こぼれた味噌汁が  椀にもどったお話

幼少の頃

叔母の家で

お客の
お代わりした
味噌汁を

二階応接へ
運んでくれ …


頼まれた。

猫の手も借りたい
法事の昼

わたしは
その椀を

手盆で
捧げ持ち

雲の上を
歩くように

慎重に

二階へ
向かった。

背後で

もう
この子の歳なら

任せて
大丈夫よ

しっかりしてるし

慌ただしい中にも

期待の声が
上がっていた。

しかし!

吃水八分の
味噌汁は

暴れることを
やめず

ふと
つまずいたはずみに

階段中腹の
とある一段に

バサ〜ッ!

無残にも
こぼれ散った。

あ〜

自分の人生は
これで終わった …


思ったのを
覚えている。

だが

しばし
狼狽えた直後
わたしは

手刀で
こぼれた味噌汁を

丁寧に
椀に戻し

八分が
七分になったものの

どうぞ

二階接客係へ
手渡したのだ。

その後
その味噌汁が

どういった運命を
辿ったかは

全く
知らない。

ただ
言えることは

それほど

世間の期待や認識を
恐怖したのだ。

さて、

言いたいことは
ここからだ。

こんなことは
実は

20代
30代
40代になっても

ある!

その都度

命の危機を
迎えることに
なるわけだが

結論として
言えることは

その全てが

成否に
かかわらず

いい想い出になる


いうことだ。

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