税理士先生から
着電!
税込
30万円までのモノ
1つ
買えそうよ
決算日まで
あと2日
もっと早く
言ってよ〜
言うと
伝票もってくるのが
遅いからでしょ!
叱られた
後がない!
わたしは
立ち上がった
柿の木を見上げて
ぼんやりしていたので
外出には
絶好だった
銀行で
30万円丁度
引き下ろし
勇躍
街へ出た
久々に
肩で
風を切った
大型電気店の
前で
10階建ての
店舗を見上げながら
店ごと
買ってやるよ!
. . . 的
気分だったが
店内を
歩くにつれ
直ぐ
滅入ってしまった
どうやら
ノートパソコン1つが
せいぜいらしい
ひ弱な
学生時代を
思い出した
夕暮れの街を
歩きながら
林立するビル群
灯がともった
家並み
あふれかえる
クルマ
何一つ
わたしのモノでは
なかった
一体
なぜだろう?
こんなに
沢山あるのに
それはまさに
哲学だった
今
周囲にある
この
夥しい数の
電気製品
これも
わたしのモノでは
ないのだ
時空が
シンクロした
あの頃と
あまり変わらない現実
しかし!
時間は
切迫していた
わたしは
慎重に検討し
2時間後
リンゴマークの
パソコン1つ持ち
夕暮れの街に
立った
南中した
上弦の月が
少し
微笑んでいるように
見えた