今年も 降るように鳴くセミの声に そっと手を合わせる一日がやってくる 。

宝物は
何ですか?


問われれば

寝床 ..


答える

どんな日も

最後はここに
辿り着き

入浴の火照りが
とれた身体を

無防備に
横たえる

立って
半畳

寝て
一畳とは

よく
言ったものだ

たとえ

どんなに
屈辱を浴び

また

勇名を
馳せたところで

結局は

広い地球の

この一畳に
帰ってくる

日光を浴びた
白きシーツの

なんと
芳しきことよ

寝返りも
心地よき枕の

なんと
めでたきことよ

人には

たったこれだけ
あればいい

時には

いろんな不安が
押し寄せる

暗がりの
中で

死への
恐怖だって

毎晩の
モノ種だ

人であれば
常なること

枕カバーの匂いに
安堵しながら

悪夢を
遠ざけていく

第一
ここは

野営の
テントでもなければ

魚雷管の
ハンモックでもない

泥水とマラリアの
草叢でもなければ

ドンゴロスが屯す
船倉でもない

酷寒の
抑留地でもなければ

亜熱帯の
密林でもなく

弾丸も
飛んでいなければ

灯火管制の
暗闇でもない

わたしの
寝床は

なんて
平和なんだ

わかっています

この寝床は

あなたが
くれたモノだと!

長い長い
苦闘の末に

あなたが

手に入れて
くれたもの!

なのに

あなた
自身は

手に
できなかった

よく
理解しています

得難き

究極の
一畳と…

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