京都、喫茶店 点描その1

京都の地で
大学生という
有難い身分にあった頃
同じ部活に身を置く友人が
よく喫茶店に誘ってくれた。
田舎者の私にとって
当時喫茶店という言葉は
まるでクリスタルガラスのように
光彩を放つ代物だった。
彼は感心するほど
京都隅々の喫茶店を開拓し
その一つ一つに蘊蓄をたれた。
さほど時を置かずして
私は何故に彼が
そこまで喫茶店に身を入れるのかを
理解することとなる。
それは、
彼が常に、
その周囲に座る
なんの因果もなき女性たちに対し
神経を研ぎ澄ましていることにあった。
彼はさほど見回すでもなく
どこそこのテーブルの
何色を着た「女」はこうだ!
数席後ろに座る長い髪の「女」はこうだ!
と、分析結果を私に発表した。
その都度私はキョロキョロし
該当する女性から
冷ややかな視線を浴びることとなった。
ある日彼から
某喫茶店へ来てくれ..と
呼び出しが掛かった。
行ってみると
彼は黒い蝶ネクタイをして
ウェーターをしていた。
お客である可愛らしい女の子と
適宜コンタクトをとっている姿に
ほ〜、
効率を上げるとはこういうことか…と、
いたく感心したことを思い出す。

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