ひねもすのたり  瀬戸内海の遊覧は  スーパー銭湯ひとつ あればよし

客先の
ミーティングを
終え

真昼間の

スーパー銭湯に
立ち寄った

立ち上る湯気の
あちこちで

男たちが
猿のように

顔を
赤らめている

さっきまで

しきりと
とりつくろう

スーツ姿を
相手にしていたのに

ここときたら

. . .

こういうのを

対称性の破れ


言うんだろうか

ガラス張りの
光と植栽は

植物公園の
アクアリウムを
思わせ

わたしは
次第に

プリミティブに
なる

そして
満を持し

歩行湯に
入ると

ジェット水流に
立ち向かいながら

エベレスト山頂を
目指し

三浦雄一郎のように
歩いた

180度
コーナーは

ぐるぐると
渦巻いており

お〜
ここは 鳴門か!

わたしは
ガリバーのように

淡路島を
迂回すると

大阪湾から
視線を

下関へと
向ける

播磨灘を
かき分け

右遠く
赤穂の坂越港を
懐かしみ

小豆島を
過ぎると

左頭上に
剣山

どこかを 空海が

歩いているに
違いない


目をこらし

村上水軍に
包囲されながらも

え〜〜い !

いとも
たやすく

排水溝へ
追いやる

すでに
天下無敵だった

瀬戸内海を
30周

わたしは
すっかり満足して

銭湯を
後にする

さっきまで

淀んで見えた
景色が

シャワーで
洗い流したように

ピカピカと
きらめいて見えた

Written by: